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舟物語(Stories of a boat), 2022, Julio Goya

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小豆島は昔、島の花崗岩を本土へ運ぶ海運が盛んでした。過疎高齢化が進んだ今、舟は島のあちこちに放置されています。島の人には日常の風景ですが、アルゼンチンの海から遠い町で育ったフリオ ゴヤの目に舟は特別な存在で、作品の材料として着目しました。 人づてに古舟の持ち主を探す。設置場所を探す。陸路で舟を運び、起立させる。そのすべてに地域の人の手助けが必要で、アーティストと人々との間に協働が生まれます。そしてこの協働が、瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)が目指す、過疎の地域おこしの鍵となっています。古舟の提供者は、再利用のお礼にと、船用塗料の調達を申し出てくれ、また別の元船乗りは、自宅に保存していた昔の船道具を、作品の装飾用にと提供してくれました。人生を共に歩んだ「宝物だ」という品々。ゴヤは「世界中探しても手に入らないですよ。こうして大事にとってあるんですね、素晴らしいです」と称賛します。地域にあるものを活かし、地域の人との協働を経て完成した作品は、芸術祭が終わってアーティストが去っても地域の誇りとして残り、島の魅力を世界へ発信し続ける。地域型芸術祭の意義はそこにあります。「瀬戸芸において我々アーティストは、主役ではなく小道具なんですよ」。 作品に触れてもいいの?とためらう人には、「どうぞあがって楽しんでください」とゴヤ。「座ってお弁当でも食べてもらえたら最高ですね」。 誇り高き海の男たちと過ごした日々の記憶を胸に、羽ばたく鳥に姿を変えた舟の物語。 瀬戸内国際芸術祭2022 でお楽しみください。 In the old days, Shodoshima Island had a thriving shipping industry that transported the island's granite to the mainland. In today's depopulated and aging society, boats lie abandoned here and there on the island. Although an everyday scene for islanders, boats have had a special presence in the eyes of Julio Goya, who grew up in a